6月9日 符丁その6(あぶれ手当て)
去年の6月18日の独り言で、『今日の仕事を確保できなかった日雇い労働者のことを“あぶれる”』と書きました。
その日の仕事にありつけなかった労働者のために、支給される“手当て”のことを、“あぶれ手当て”と言います。
この手当ては、大阪市から?支給されます。 失業対策の一環?らしいです。
この“あぶれ手当て”は誰でももらえるわけではありません。 その資格の認定を受けなければなりません。 特別な試験とかがあるわけではなくて、申請をすれば大抵の人はもらえるみたいです。 問題はこの認定証をもらうことです。そしてこの認定証を常に携行していなければならないことです。
この認定証のことを、通称=手帳と言います。
大阪西成の愛燐センターで、その日の仕事を確保している労働者の多くは、この手帳を持っています。
私の知る限りで、“あぶれ手当て”の金額は、6千数百円だったと思います。(10年ほど前)
実は労働者の日当の金額は、この“あぶれ手当て”を基準に決まります。 例えば“あぶれ手当て”が7500円だとしたら、市場(この場合の市場は、愛燐センター周辺のこと。)の最低賃金が9500円。そしてそれを基準に、左官職ならば10500円。大工職ならば12500円。鉄筋職ならば13500円。と言った具合。
6月8日 影の主役
ご存知建築の朝は早い! どれくらい早いか? 朝8時に朝礼があります。この時に、ラジオ体操・人員の点呼・朝のミーティング・安全に対する注意、確認などがあります。 要するに職人さんは、必ず朝8時までには現場に到着しなければなりません。
朝8時に工事現場に到着しようとすると、遅くても朝7時には自宅を出なければなりません。 工事現場に行く前に、会社に寄らなければならなかったら、朝6時には自宅を出なければなりません。
だから職人さんの朝は早いのです。
工事現場ではさまざまな職人さんが同時に仕事をします。 時には仕事がバッティングすることもしばしば。 綿密な打ち合わせをしておかなければ、職人さん同士が怪我をしてしまいます。 職種の数は数十種類に及びます。
それら全ての職人さんを取りまとめているのが、ご存知“現場監督”さんです。 彼らは職人さんと違い、いちサラリーマンです。 そして勿論、現場監督さんは全ての職人さんよりも、誰よりも早く工事現場に到着しなければならないのです。
職人さんと現場監督さんの大きな違いは、給与体系です。 現場監督さんは、一見すると職人さんよりはずっと安い給料で働いています。(年収ベースで見ると、同じか若しくは若干多いと思います。)
職人さんの給料(日当)のあがり方は、とても早い! 全ては能力給なので、スキルのアップとともにどんどん日当が上がります。 反面監督さんの給料は、少しづつしか上がりません。
しかし職人さんの日当は、ある程度まで上がると、それ以上はあがりません。(頭打ちがあります。) しかし監督さんの給料は、緩やかにですが、どんどん上がります。
私の知る限りでは、現場監督さんには残業手当がほとんど付きません。 職人さんたちは、5時を過ぎるとさっさと帰ってしまいます。 しかし現場監督さんの仕事は、5時ではとても終わりません。 ほとんど毎日、夜11時ごろまで図面を書いたり、職人さんの手配をしたり、工程の調整をしたり、現場の掃除をしたり。 それでもほとんど残業手当が付かないと聞いたことがあります。
そして一般のサラリーマンのような、有給手当てなどは、毎年ほとんどが“切捨て”になると聞きました。
そんな悪条件の中、誰からも認められることもなく、誰からも励まされることもなく。 それでも、『誰にも負けない建物を作るんだ!』とひそかに高いプライドを持って、ただ黙々と仕事をする現場監督さん。
そんな“いぶし銀のような、まばゆい男”がなんと多いことか。
職人さんの高い技術なしでは、決して建物は立ちません。 しかし同時に、黙々と仕事をこなす“現場監督”さんがいなければ、工事現場のバリケードすら、立てることが出来ないのも事実です。
間違いなく彼らは、影の主役です。
6月1日 技術の継承
前回の続きを少々。
むかし日曜大工で、指をかなづちでたたいてしまった時に『素人だなー』と笑われたことがあった。 確かに。“しろうと”なんだから、かなづちで指をたたいても仕方のないことか?と苦笑いをしたことがある。 しかしいざ自分が大工になったときに、先輩大工に笑われたことがある。 『大工を永年やってて、指が10本そろってることなどありえない!』と。 その先輩大工の左手の指を見せてもらったことがあるけど。 親指は第2関節から切断。 人差し指は第1関節から切断?(つぶれている。) 薬指は第2関節から折れ曲がっている。
その先輩大工はその左手を私に差し出し、まるで勲章でも見せるかのごとく、『なっ!』と短くうなづいた。 右手は全ての節で不自然に太くなってごつごつしている。
『そうなんだ、手なんかをかばっていては大工は仕事にならないんだ。』 さっと振り向く先輩大工の背中が妙に大きく感じた。
それからベテラン大工の手を観察したことがあるけど、やはりほとんどのベテランの先輩大工の指は、それぞれに10本そろったためしがなかった。 『技術をおぼえるとはこういうことなんだ。』ともつくづく感じたことがある。
しかし大工に限らず、建設現場で技術をおぼえるには、まず絶対に超えなければならないハードルがある。 それは『天気に勝つ』ことだ。 デスクワークをしていると、ほとんど気が付かないけれど、外で仕事をしていると『寒くもなく、暑くもない』天気などは1年で数日しかないのだ。
どんなに暑くても、どんなに寒くても、雨が降っても、雪が降っても、その場を決して逃げることが出来ない。 そのつらさは、現場仕事をしてみないと絶対に分からない。
若い現場見習いのほとんどは、この悪天候の中の仕事にまず音を上げて逃げてしまう。 しかしどんなに素晴らしい技術も、まずここを乗り越えなければその先には進めない。
元来海に囲まれた狭い島国の日本で、ものづくりの技術がなくなったら、どうやって生計を立てるのか? 全ての人々がインターネットで商売するか? また株の売買で生計を立てるか? それともM&Aで生計を立てるか? そんなことが出来るはずがない。
なんとしてもこの高い技術と誇りを根絶させてはならない。
今一度この技術を見直してはどうだろう。
   
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